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障がい者福祉の仕事に携わろうと思っている方の中で「行動援護の資格を取りたいけど移動支援とは何が違うのかな?」「それぞれのできること、できないことを知りたい」などと思っている方は多いかもしれません。
どちらも障がいのある方の外出をサポートするサービスですが、いくつかの違いがあるため事前に理解しておくことが大切です。
本記事では行動援護と移動支援の違いやそれぞれのサービス内容、資格要件などを解説します。
記事を読むと、2つの違いを正しく理解した上で、それぞれに合った資格の取得を目指せるようになります。
行動援護と移動支援の違い
どちらのサービスも障がいのある方が安全に外出し、移動や公共交通機関の利用などをスムーズにおこなえるようサポートするのが目的です。
しかし、細かく見ていくと次のような3つの違いがあります。
- ・サービスの管轄
- ・必要な資格
- ・サービスの対象者
以下でそれぞれの詳細を確認していきましょう。
サービスの管轄
まずはサービスの管轄です。
それぞれ提供するサービス元が異なり、同時に特徴も変わってきます。
行動援護サービスの管轄
行動援護を管轄しているのは国です。
障害者総合支援法の介護給付に含まれるサービスで、国のルールに基づいて運用されています。
全国で同じルールに沿ったサービスの提供が特徴です。
参考:厚生労働省『障害者等の移動の支援について』
移動支援サービスの管轄
一方で移動支援を管轄しているのは市町村です。
障害者総合支援法の地域生活支援事業に位置づけられ、地域ごとの特性や障がいのある方の状況などに応じて、各市町村が柔軟に事業をおこなえるようになっています。
そのため、サービスを提供している市町村によって、内容や対象者に違いがあるのが特徴です。
参考:厚生労働省『地域生活支援事業』
必要な資格
また各サービスに従事するためには、それぞれに合った資格取得が必要です。
行動援護に必要な資格
行動援護のサービスに従事するためには、行動援護従業者養成研修といった専門的な研修を修了するほか、一定の実務経験が必要です。
具体的な資格要件については後述します。
移動支援に必要な資格
先で述べたように、移動支援は地域生活支援事業に含まれているため、市町村によってサービス提供に必要な資格要件が異なります。
しかし、一般的には従事する市町村の移動支援従業者養成研修課程を修了していれば大丈夫です。
研修課程は主に次の3種類に分かれています。
- ・移動支援従業者養成研修全身性課程(全身性ガイドヘルパー)
- ・移動支援従業者養成研修知的障がい課程(知的障がいガイドヘルパー)
- ・移動支援従業者養成研修精神障がい課程(精神障がいガイドヘルパー)
対象となる利用者像に応じて、受講する研修を選ぶとよいでしょう。
サービスの対象者
最後の違いはサービスの対象者です。
行動援護サービスの対象者
行動援護の主な対象者は、常に介護を必要とする方や行動障害がある方など、より重度な障がいのある方です。
障害支援区分で以下の2つに該当する必要があります。
- ・区分3以上
- ・行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上(障がいのある児童の場合は、これに相当する支援の度合)
行動関連項目等には異食行動や多動・行動停止、突発的な行動、てんかん発作などが含まれており、手厚いケアを必要とすることがわかります。
参考:WAM NET『行動援護』
参考:厚生労働省『「強度行動障害」とは』
移動支援サービスの対象者
対して移動支援の対象者は、市町村によって異なります。
たとえば、静岡県富士市では知的障がいのある方と精神障がいのある方は、以下の要件に該当すれば利用できます。
- ・屋外での移動に全面的、または部分的な支援を必要とする方
- ・社会生活上必要不可欠な外出、および社会参加のための外出の支援が必要と認められる方
- ・適切な介護者を得ることができない場合
障害支援区分や障害者手帳の有無にかかわらず、市町村が必要と判断すればサービスを受けられるところが多いでしょう。
参考:富士市『移動支援事業について』
行動援護|できること・できないこと
行動援護ではできることと、できないことが明確に分かれています。
行動援護|できること
行動援護では障がいのある方が安全に行動できるように、さまざまなサポートをおこないます。
主な内容は次の3つです。
- ・予防的対応
- ・制御的対応
- ・身体介護的対応
予防的対応とは障がいのある方が外出時に不安になったり、不適切な行動をとったりするのを防ぐためのものです。
以下のような対応が当てはまります。
- ・先の予測がつかないと不安定になる発達障がいのある方に対して、あらかじめ外出のスケジュールを伝えておく
- ・電車の遅延といった予想外のことが起こりそうなときは、障がいのある方に伝えて了承をとっておく
もしパニックなどが起きたときに、適切な方法を用いて収めるのが制御的対応です。
どれだけ事前準備をしていても、外出中にパニックのような行動障害が出る可能性はゼロではありません。
パニックを起こした本人や周りに危害がおよばないよう、その場に合った方法で対応する必要があります。
最後は身体介護的対応です。
一人ひとりの心身状態に合わせて食事や排泄、着替えといった、外出中に必要なサポートをします。
行動援護|できないこと
外出とひと口にいっても、行動援護では以下のように利用できないものがいくつかあります。
- ・通勤
- ・営業活動などの経済活動を目的とした外出
- ・通年で長期にわたる外出
- ・社会通念において不適切と判断される外出
制度上できないサービスを提供してしまうと、後々トラブルが起こるかもしれないため、事前に理解しておきましょう。
行動援護従業者の資格要件
行動援護では従業者とサービス提供責任者のそれぞれで資格要件が異なります。
従業者の資格要件(以下の2つに該当する必要がある)
- ・行動援護従業者養成研修課程修了者、または強度行動障害支援者養成研修(基礎および実践研修)修了者
- ・知的障がいや精神障がいのある方の直接支援業務に、1年以上かつ180日以上従事
サービス提供責任者の資格要件(以下の2つに該当する必要がある)
- ・行動援護従業者養成研修課程修了者、または強度行動障害支援者養成研修(基礎および実践研修)修了者
- ・知的障がいや精神障がいのある方の直接支援業務に、3年以上かつ540日以上従事
行動援護従業者養成研修は各スクールや地域によって科目や日数・時間数が異なりますが、基本的には10時間の講義と14時間の演習で修了します。
また2021年3月31日までに要件を満たし従事されている方は、2024年3月31日までの経過措置として、以下の条件に該当すれば従業者・サービス提供責任者として働けます。
従業者の資格要件(以下の2つに該当する必要がある)
- ・居宅介護従業者の要件を満たしている
- ・知的障がいや精神障がいのある方の直接支援業務に、2年以上かつ360日以上従事
サービス提供責任者の資格要件(以下の2つに該当する必要がある)
- ・居宅介護従業者の要件を満たしている
- ・知的障がいや精神障がいのある方の直接支援業務に、5年以上かつ900日以上従事
経過措置終了後は行動援護従業者養成研修課程、または強度行動障害支援者養成研修を修了しなければいけません。
参考:吹田市『行動援護を行うための要件について』
行動援護・移動支援それぞれに合った資格を取得しましょう!
行動援護と移動支援は、どちらも障がいのある方が安全に外出できるようサポートするサービスです。
しかし、サービスの管轄と必要な資格、サービスの対象者の3つに大きな違いがあります。
同じ障害者総合支援法のサービスのため違いがわかりにくいですが、2つの特徴を正しく理解した上で、それぞれに合わせた資格を取得しましょう。
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